各党のマニフェスト評価

MAKE the RULEキャンペーンでは、各党のマニフェストの気候変動対策について、次の5つの点でチェックしてみました(注)。

1.マニフェスト全体の中での気候変動の位置づけ
2.法律制定について
3.目標について
4.削減のしくみについて
5.その他

それぞれにMAKE the RULEキャンペーンのコメントもつけています。
比例区で政党を選ぶときの参考として、支持政党をエコ・チェックしてみましょう。

○PDF版はこちらからダウンロードしてください。
http://www.maketherule.jp/dr5/sites/default/files/manifesto-review.pdf
(2009年8月12日 改訂版)

(注)国民新党、新党日本、改革クラブ、みんなの党、新党大地、幸福実現党については、末尾にまとめて整理しています。

1.マニフェスト全体の中での気候変動の位置づけ

〔チェックポイント〕
(1)気候変動問題を政策の柱の一つにしているか?
政党名 位置づけているか 詳細
自由民主党 はっきりとはしていない 13の政策の柱のうちの10番目に「資源・エネルギー」、11番目に「環境・地球温暖化」
公明党 している 5つの重点政策のうち4つ目に「緑の産業革命」
民主党 している 5つの約束の5つ目に「雇用・経済」の項、その中に気候変動対策を位置づけ
日本共産党 している 8つの政策のうちの6つ目に、「地球温暖化をくいとめる国際的な責任を果たし、地球環境を守ります」
社会民主党 している 「生活再建」10の約束のうち、7つ目に、「みどり~地球温暖化ストップ」

〔MRコメント〕

どの政党も、地球温暖化問題については、何らかの位置づけで重要政策もしくは約束のなかに気候変動問題を盛り込んでいます。しかし、いずれも公約のトップ3に入ることはなく、政党としてのプライオリティの置き方としては、後ろの方に位置付けられています。
気候変動は、私たちの暮らしをまもる最大・最優先のテーマ、と位置付けられるまでには至っていないようです。

2.法律制定について

〔チェックポイント〕
(2)中長期の気候変動対策をすすめる法律をつくる方針を掲げているか?
政党名 掲げているか 内容
自由民主党 掲げている 「低炭素社会づくり推進基本法」を制定
公明党 掲げている 「低炭素社会づくり推進基本法」を制定
民主党 掲げている 「地球温暖化対策基本法」の創設を提唱(マニフェストでは法律制定を明記していないが、政策集で明記)
日本共産党 掲げている 気候保護法(仮称)の制定
社会民主党 掲げている
〔MRコメント〕

中長期のビジョンをさだめ、具体的な目標と、推進施策を掲げた法律をつくることは、行動を先延ばしにすることなく、着実に排出削減を進めていくために重要です。将来のこどもたちや途上国の人々に対して、責任ある行動を約束することになります。

・自民党、公明党、民主党、共産党が、中長期を視野にした気候変動対策の法律の制定をうたっています。社民党は、いまのところ法律制定はうたってはいません。
・自民党・公明党の提案する法律は、前国会で提出されたもので、この法律には中期目標が掲げられていません。
・民主党は、法律の中で2020年に25%削減(1990年比)という中期目標をかかげています。

3.目標について

〔チェックポイント〕
(3)具体的な中長期目標を掲げているか?
政党 2020 年目標 2050 年目標
自由民主党 05 年比 15 %削減

( 90 年比 8 %削減に相当)
言及なし
公明党 90 年比 25 %削減 90 年比 80 %削減
民主党 90 年比 25 %削減 90 年比 60 %削減以上
日本共産党 90 年比 30 %削減 90 年比 80 %削減
社会民主党 90 年比 30 % 削減 90 年比 80 %削減
〔MRコメント〕

世界では産業革命前のレベルからの気温上昇が2℃を超えないようにすることが確認されています。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)に代表される科学は、気温上昇を2.0~2.4℃に抑えるためには、2020年に1990年比で25%~40%削減をする必要があるとしています。

・この範囲で目標を提案しているのは、民主党・共産党・社民党で、1990年比25%削減以上の削減を掲げています。ただし、これらの目標が、国内削減のみで達成するのか、海外から購入する分を含むのかなどの内訳についての明記はなされていません。
・自民党は、2020年の中期目標として、6月に政府が発表した2005年比15%削減を掲げています。しかしこれは今の京都議定書の基準年である1990年比に直すと、8%削減にしか過ぎず、国際交渉で先進国に要求されている25%以上の削減とはなっていません。
・公明党は与党として、政府が2005年比15%削減を掲げることに合意しましたが、マニフェストでは、2020年に1990年比25%削減の目標を掲げ、自民党とは異なる立場を示しています。与党としての立場とマニフェストの公約は矛盾するように見えますが、その説明としては、政府の8%削減はいわゆる国内削減のみの「真水」であり、海外での削減分や植林を加算される見込みであることが但し書きされています。8%削減以外の17%分は海外分や植林でまかなって25%削減に引き上げる方針のようにも読めますが、正確にはわかりません。

4.削減のしくみについて

〔チェックポイント〕
(4)炭素に価格をつけるしくみ(キャップ&トレード型排出量取引・炭素税)の導入を盛り込んでいるか?
政党名 盛り込んでいるか 詳細
自由民主党 盛り込んでいない
公明党 盛り込んでいる ・ 2013 年までに大規模排出者を対象とするキャップ&トレード型の国内排出量取引制度と、中小事業所等での削減を進める国内クレジット制度を組み合わせ
・炭素税については検討
民主党 盛り込んでいる ・キャップ&トレード方式による実効ある国内排出量取引市場を創設。
・地球温暖化対策税の導入を(過度の負担とならないよう)検討。
日本共産党 盛り込んでいる ・政府と産業界の間で削減目標を明記した公的な削減協定の義務付け
・補助的手段として、国内排出量取引や CO2 排出量に着目した環境税を導入
社会民主党 盛り込んでいる ・環境税( CO2 排出量に比例)の導入をめざし、社会保障や温暖化対策などの財源へ
・キャップ&トレード型の国内排出量取引制度を導入
〔MRコメント〕

・キャップ&トレード型の国内排出量取引制度や炭素税は、実効力のある温暖化政策で、世界で導入が進んでいます。しかし、日本ではいずれも本格的な導入はされていません。

・自民党は、排出量取引にも炭素税にも言及していません。
・公明党は、先に自民党とともに提出した法律の中では排出量取引の創設は明記しませんでしたが、公明党のマニフェストでは、2013年までにキャップ&トレード方式の排出量取引制度の導入をするとしています。
・民主党・社民党は、キャップ&トレード方式の排出量取引制度と炭素税の導入を打ち出しています。
・共産党は、まず政府と産業界との協定の義務付けをうたい、補助的手段として排出量取引や炭素税を入れるとしています。

〔チェックポイント〕
(5)再生可能エネルギーの具体的な導入目標はあるか? また、再生可能エネルギー電力の固定価格買制度が盛り込まれているか?
政党名 導入目標 固定価格買取制度の導入
自由民主党 太陽光発電を 2020 年に 20 倍、 2030 年に 40 倍(再生可能エネルギー全体での目標はなし) 太陽光発電の買取制度などを通じた再生可能エネルギーの需給拡大(全量買い取りか、太陽光以外のすべての再生可能エネルギーも対象とするのかは明記なし)
公明党 ・ 2020 年に最終エネルギー消費の 20 %を再生可能エネルギーに

・太陽光発電を 2020 年に 20 倍
・電力の固定価格買取制度を拡充(全量買い取りか、太陽光以外のすべての再生可能エネルギーも対象とするのかは明記なし)
民主党 2020 年に一次エネルギーの総供給量の 10 %を再生可能エネルギーに すべての再生可能エネルギーについて、全量買い取り方式の固定価格買取制度を導入
日本共産党 2020 年に一次エネルギーの 20 %、 2030 年に 30 %を自然エネルギーに 太陽光だけでなく自然エネルギーによる電力全般を全量買い取る固定価格買取制度に転換
社会民主党 太陽光や風力発電を電力会社が一定の価格で買い取る固定価格買取制度を導入
〔MRコメント〕
<導入目標>

 太陽や風、バイオマスなどを利用した再生可能エネルギーの利用を飛躍的に増やしていくことは、地球温暖化対策の切り札です。具体的な導入の目標を掲げ、それを推進する実行力のある政策が必要です。

・自民党は、再生可能エネルギー全体としての導入目標は掲げず、すでに政府方針となっている太陽光発電の20倍(2020年)、40倍(2030年)の導入目標を掲げています。
・公明党は、最終エネルギーに対する再生可能エネルギーの割合を2020年に20%にするという政府と同じ目標を掲げ、それに対し、民主党・共産党は2020年に一次エネルギー供給に対する再生可能エネルギーの割合を、10%(民主党)、20%(共産党)とする方針をそれぞれに掲げています。

※なお、再生可能エネルギーの導入目標数値は、「一次エネルギー当たり」なのか、「最終エネルギー消費当たり」なのかで、大きく異なります。「最終エネルギー消費当たり」の場合は、発電ロス分を含まないため、同じだけの再生可能エネルギー量の導入でも、大きな割合を占めるように見えます。自民党の最終エネルギー消費当たり20%は、民主党の一次エネルギー当たり10%よりも、再生可能エネルギーの導入量は小さいとみられます。詳しくは、気候ネットワークのペーパーをご覧ください。

<固定価格買取制度>

 固定価格買取制度とは、再生可能エネルギーの普及を促す効果的な政策で、再生可能エネルギーで発電した電力を、一定期間、高い固定買取価格で買い取ることを、国が保障する制度です。近く、太陽光の余剰電力だけを対象に限定的な買取制度が始まることになっていますが、太陽光だけではなく、風力やその他の再生可能エネルギーに対象を広げ、全量を買い取るように拡大・強化することが求められています。

・自民党はこれについて環境・地球温暖化のところで、太陽光発電の買取制度などを通じた再生可能エネルギーの需給拡大と言及しているのみです。
・公明党は、固定価格の買取制度の拡充としていますが、その詳細は明らかではありません。
・民主党・社民党・共産党は、すべての再生可能エネルギーを対象に、全量買取方式の固定価格買取制度の導入をうたっています。

〔チェックポイント〕
(6)脱原発に言及しているか?
政党名 言及しているか 詳細
自由民主党 していない(推進の立場) 原子力エネルギーの利用を強化(発電比率を 25.6 %→ 40 %、発電所の設備利用率 58 %→ 84 %)する
公明党 していない (原子力に関して言及なし)
民主党 していない 安全を第一として、国民の理解と信頼を得ながら、原子力利用について着実に進める
日本共産党 している 危険な原発頼みの「環境対策」をあらためる
社会民主党 明確にしている ・脱原発をめざし、核燃料サイクル・再処理を中止。

・プルサーマル計画に反対
〔MRコメント〕

地球温暖化の名の下で原子力発電を進めることは、適切な解決策とは言えません。これからは地域分散型の安全なエネルギーを選ぶことが必要です。
・脱原発を明確に掲げているのは、社民党のみです。共産党も原発利用には極めて慎重な立場です。
・その他の政党は程度の差はあっても推進の立場です。とくに自民党は明確に推進の立場を示し、目標数値も掲げています。

5.その他

〔チェックポイント〕
(7)高速道路料金についての考えはどうか?
政党名 詳細
自由民主党
公明党 高速道路料金の引き下げ、割引制度の恒久化
民主党 高速道路無料化
日本共産党 高速道路料金の軽減よりも福祉や教育を優先
社会民主党
〔MRコメント〕

高速道路料金の軽減・無料化は、自動車利用の促進に直結し、CO2排出を促すため、温暖化対策には逆行する政策です。また、鉄道やバス、フェリーなどの交通機関の衰退を招いてしまいかねません。温暖化対策としては、料金割引・無料化は進めるべきではありません。

・政府は、これまでも期間限定で高速道路の割引を進めていますが、自民党は、これについてマニフェストでは何も触れていません。
・公明党は、割引制度の恒久化などをうたっています。
・民主党は、段階的な無料化を提唱し、公約でも大きくPRしています。
・これらに対し、共産党は、料金の軽減には反対の立場を取っています。

〔チェックポイント〕
(8)税財政、暫定税率について触れているか?
政党名 詳細
自由民主党 エコカー減税を始めとした税制全体の一層のグリーン化の推進
公明党 ・自動車重量税の軽減など暫定率税率を含む税率のあり方を総合的に見直し、負担を軽減

・税制全体のグリーン化
民主党 目的を失った自動車関連諸税(ガソリン税、軽油引取税、自動車重量税、自動車取得税)の暫定税率を廃止し 25 兆円の減税
日本共産党 ・原発に使われる電源開発促進税や、海外からの排出権を買い取るのにも使われる石油石炭税の使い方を見直し、ユーザーへの負担を抑制
社会民主党 ガソリン税の暫定税率は廃止し、環境面から抜本的に見直し
〔MRコメント〕

自動車関連諸税は、自動車や燃料に課税されている税金であり、それらの価格を押し上げていることから、クルマ利用等を抑制する環境税=炭素税のような役割を果たしています。温暖化問題が深刻になっている現在では、エネルギー課税は引き上げていくべきという流れにあります。にもかかわらず、これを引き下げることは、CO2排出増加を促す、逆行政策といえます。

・民主党は、自動車関連諸税の暫定税率を廃止するという一方で、地球温暖化対策税を導入すると提唱しています。もしその分単純に自動車関連諸税が下がってしまうなら、クルマ利用を促進してしまうでしょう。もし民主党が、暫定税率を上回る税率で地球温暖化対策税を導入するなら、CO2への抑制効果はそのまま維持されることになります。ただ、マニフェストでは、地球温暖化対策税の税率は示されておらず、それは保障されていません。
・同様に、社民党も暫定税率を廃止とうたっています。環境面から抜本的に見直すとしていますが、その結果がどうなるのかは、明らかになっていません。
・公明党は、「総合的に見直し、負担を軽減」とあり、はっきりとはしませんが、暫定税率を下げる方針が垣間見えます。
・共産党は、自動車関連諸税には触れず、電源開発促進税や石油石炭税の使途の見直しを提案しています。
・自民党は、すでに行っているエコカー減税以外に、具体的なことには何もふれていません。

その他の政党について

【改革クラブ】

・3つの柱の一つ「持続可能な社会の実現」のなかで、「低炭素社会づくりや持続可能な社会経済の実現に向け、経済成長戦略を練り直し、活力ある豊かな日本社会を作ります。」とうたい、その中で下記の項目を掲げている。
・政府の2020年に05年比15%削減の中期目標を前倒しするよう努力
・環境のための設備投資減税や研究開発減税の拡充
・ITと環境・エネルギー問題への取り組みを融合し、新産業分野を創造

【新党日本】

・6つの重点施策のうち3つ目に「地域密着型の新・三業革命を推進」とうたい、その中で「フロンティア・エネルギーを実現し、エネルギー自給率を高める」として、下記の項目を掲げている。
・水素・バイオ等の新エネルギーを日本の戦略的資源として集中的な技術開発を行う
・小水力=水車発電設置の法的簡素化で地産地消のエネルギーを確保
・新・三業革命(農業・林業・漁業)によるまっとうなグリーン・ニューディール政策を推進
(中期目標や新エネ導入目標などは掲げられていない。)

【みんなの党】

・4つの柱の2つ目「生活重視の当り前の政治を実現する!」の中で、未来を切り拓く「経済成長戦略」として下記を掲げている。
・「グリーン・グロース(緑の成長=環境制約による成長)を実現
・再生可能エネルギーの利用促進、省エネ技術への投資、排出量取引市場の創設等により、温室効果ガス排出量の削減目標の達成をテコとし「緑の成長」を促進。
・4つの柱の4つ目「志高い外交で国際的に名誉ある地位を!」の中で、「地球規模の課題にも積極的な役割を果たす」とし、下記を掲げている。
・日本の温室効果ガスの削減目標を中期(2020年)-25%、長期(2050年)-50%(1990年比)

【新党大地】 【国民新党】

・マニフェストの中に、気候変動や地球温暖化に関する記述はない。国の政策として重要視していないと考えられる。

【幸福実現党】

・「CO2の増加が温暖化の原因というのは仮説にすぎない」とし、「温暖化対策で、性急にCO2の排出量は削減しません」と断言している。
・温暖化対策を推進しない方針を明らかにした唯一の政党である。


評価に使用した各党のマニフェスト(09.08.12現在公表分)

自由民主党:「自民党政策BANK 」
公明党: 「選挙公約 manifesto ’09」
民主党:「民主党の政権政策 Manifesto」
社会民主党:「衆議院選挙公約2009・概要版 Manifesto (第1次案)」
共産党:「共産党の総選挙政策」 
国民新党:「国民新党の政権政策」
改革クラブ:「2009衆議院選挙マニフェスト」 
みんなの党:「マニフェスト2009」(09.08.08発表)
新党大地: 「公約」
新党日本:「日本「改国」宣言」
幸福実現党:「幸福実現党の政権政策」

<参考文献>

気候ネットワーク:再生可能エネルギー20%目標」へのコメント

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